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三原三部手帳より

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□A1〜24頁

蒼い地平線が或る土の弾性をもち
従て地面が踏みに従って
ゴム或はアスファルトの
程度の弾性をもつこと乃至
ヒンヅーガンダラの乃至西域
人々もこれを望み
近代の多くの造園家たちも
これを考へる
然るに或る平均的に不変な剛性をもつ地殻を
更に任意に変ずることは
今日の世界造営の技術の範囲ではあらぬ
それを決定する因子は
大きく二つになってゐる
一つは仏の神力により
一つは衆生の業によると
さう
われらの先住文化の帯有者たちも考へ
またわたくしもさう思ふ

乃至そこに美しからぬ
林藪卉木なく
受用に適せぬ産者のないことは
……
タキスの天に
ぎざぎぎにそゝり立った青い鋸を
維摩居士は
人に高貴の心あるが故であるといふ
(すべてこれらの唯心論では
 風景がことごとく
 諸仏と衆生の徳の配列
 であると見る)
それは感情移入によって
仮に生じた情緒と外界との
最奇怪な混合であると
皮相に説明されるがごとき
さういふ種類のものではない
はんの木の群落の下に
すぎなをおのづとはびこらせ
やはらかなやさしいいろの
budding frenを企画せよ
それは清冽な使徒告別の図の
がくぶちにもなる
Peasant Girls
電線にとまる小鳥のやうに
みなわれらのまはりの座席にちらばる
この平野は巨きな海のごとくであるが故に
あちこち台地のはじには
白い巨きな燈台もたち
それはおのおの二千アールの稲の
夜の健実な成長を
促すための設備である

諸界この国土の
装景家たちは
この野の福祉のためには
まさに命を堵ねばならぬ

何たる秀でしよき実であるか
この春寒さでLargo融け
且つ雷ありて硝酸そゝぎかゝったのだ
グランド電柱を去る
Peasant Girls小鳥のやうに
座席を立って降りてゆく
─Peasant Girls
 グランド電柱にとまる小鳥のごとく
 来りて座席につきにけり─
─〃
       去りにけり─
─Peasant Girls
 Gland電柱にとまる小鳥のごとく
 座席につかんとしたれども
 みないかめしくとざされたれば
 肩をすぼめて立てりけり─

粟と稗とは救荒作物として
ひとの食ふものであったが
いまはことごとく
インコ十姉妹等小鳥の飼料となり
黒い貨車の幾千輌が
それをぜいたくな東京や京阪地方へ運んだ
そして地方の百姓たちは
稗の代りに
陸稲の餅や
組合の機械を使って
じぶんで精白した米をたべてわらった

巨きな片麻岩の
山塊の名残りが
夜といっしょに霧や
海気のなかに漂ふころ
奇怪な形の

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□A26〜D2頁

(一)造園家とその助手との対話

あれが巨大なアブクマの
片麻岩系の山塊であるが
そのいちばん南のはじから
巨きな光る雲塊ものぼる
それはたくさんの瓔珞や幡を容れた
毘沙門天の宝庫であると
trans Himarayaの高原の住民たちが考へる
あるときそれが六つの頭首ある戦の馬と
千の手に或はほこや独こをもち
髪をみだしかつましゅら天であるとも空想して
Sven Hedinの名与ある著述のなかに
そのたわむれのスケッチを
いろどりをしてかゝげてゐる
冬はきらびやかに氷華が飛ぶのに
けふはきらびやかに石炭がらが飛ぶと云へば
誰でもひとつのアイロニーのやうに
(?)くではあらしが
(?)たまへこれらの
二つの汽車の間
まぶしさうな老人の顔の前で
何ときらびやかに飛びちがふ
すきとってうすらつめたく
シトリンの天と浅黄の山と
青々つづく稲葉の氈
岩手県のなかへ帰って来た
電燈はみなダアリヤの花に咲き
泳ぐやうにしてその灯のしたにするがへる雀も
みんなわたくしには
(?)理解し楽しいものばかりです
麦もざくざく黄いろにみのり
(?)な勢ある青い葉を
朝からわたしは見てゐない
霜害もなく蚕もとれて
五月に土壌が乾いたとこへ
陸羽一三二号のやうな
(?)丈な稲が普及されてゐるので
稲作も大丈夫です
(?)雲この雲
(?)い虹をつくるこの雲の群
これがわたくしのシャツであり
これがわたくしの呑みものである
(?)りの足らぬ
(?)うど二週間
痩せて青ざめ
眼ばかり光って
帰って来たのですが
わたくしは麦わらの
(?)たはあの古い帽子をかぶり
黄いろな木綿の寛衣をつけて
南は二千の沖積地から
飯豊太田湯口宮の目
湯本と好地
(?)幡矢沢と
はって行かう
(?)るんでcolloidalな水に手をあらひ
しかもつめたい秋の分子をふくんだ風に
石炭からの系列であらう
雪ならば肌をよごさず溶けてしまふが
こちらは黒くてからだにつくといふ点がちがふ
野はらが雲の縞になり
または幾重の縞をたゝむとき
またそのはてに
みだれた雲のちらばるときに
School Girlsの群
革むちもパチッと鳴らせ
革むちもパチッと鳴らせ
熟した古銅の日はのぼり