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〔隅にはセキセイインコいろの白き女〕

隅にはセキセイインコいろの白き女
おごりてまなりをつぶりてあれば
蓋をしめたる緑タイルの暖炉前あたりには
かっては獅子とも虎ともよばれ
いま歯ぞ抜けし 村長の
頬紅き孫の中学生とつれだちて
手袋の手をうちかさね
いとつゝましく汽車をまつ
さあれ やさしきその孫の
髪 獅子のたてがみのごとく
逆立てるこそおかしけれ
この時雲はちゞれてひかり
床はけしくもよごれたる
二月の末の午后にありしか
あゝ今日は
一貫二十五銭にては
引き合はずなど
ぐたぐれの外套を着て考ふることは
心よりも物よりも
わがおちぶれしかぎりならずや