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産業組合青年会

祀られざるも神には神の身土しんどがあると
あざけるやうなうつろな声で
席をわたつたそれは誰だ
……雪をはらんだつめたい雨が
  闇をぴしぴし縫つてゐる……
まことの道は
誰が云つたの行つたの
さういふ風のものでない
祭祀の有無を是非するならば
卑賤の神のその名にさへもふさはぬと
いきまきこたへたそれは何だ
……ときどき遠いわだちの跡で
  水がかすかにひかるのは
  東に畳む夜中の雲の
  わづかに青い燐光による……
部落部落の小組合が
ハムをつくり羊毛を織り医薬を頒ち
村ごとの、また、その聯合の大きなものが
山地の肩をひととこ砕いて
石灰岩末の幾千車かを
えた野原にそゝいだり
ゴムから靴を鋳たりもしやう
……くろく沈んだ並木のはてで
  見えるともない遠くの町が
  ぼんやり赤い火照りをあげる……
しかもこれら熱誠有為な村々の処士会同の夜半
祀られざるも神には神の身土があると
老いて呟くそれは誰だ


掲載誌「北方詩人」第二巻第七号(1933年10月1日)
関連作品:「春と修羅 第二集」の「三一三 産業組合青年会」