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ほこらの前のちしゃのいろした草はらに
影がきれいに降ってゐる
    …鳥はコバルト山に翔け…
ちしゃのいろした草地のはてに
杉がもくもくならんでゐる
    …鳥はコバルト山に翔け…
那須先生の筆塚が
青ぐもやまた春の底で
銭のかたちの苔をつける
    …鳥はコバルト山に翔け…
塚のうしろで二本の巨きなとど松が
荒さんで青く天の氷に立ってゐる
    …鳥はコバルト山に翔け…
樹のいちいちの心からは
ことしの夏の設計が
あをあをとして雲にかれる
    …鳥はあっちでもこっちでも
     朝のピッコロを吹いてゐる…


掲載誌「貌」大正15年7月篇(1925年7月1日)
関連作品:「春と修羅 第二集」の「九〇〔祠の前のちしゃのいろした草はらに〕」