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秋と負債

半穹二グロスからの電燈が
おもひおもひの焦点フォカスをむすび
柱の陰影かげを地に落し
濃淡な夜の輻射をつくる
 ……またあま雲の螺鈿からくる青びかり……
ポランの広場の夏の祭の負債から
わたくしはしかたなくこゝにとゞまり直立するけれども
これら二つのつめたい光の交叉のほかに
もひとつ見えない第三種の照射があって
ここのなめらかな白雲石ドロミットの床に
わたくしの影を花盞のかたちに投げてゐる
考へるほどそれがいよいよあきらかなので
もうわたくしはあんなSotigeソッティーゲーな灰いろのけだものを
二度おもひだす要はない


掲載誌「銅鑼」第六号(1925年1月1日)
関連作品:「春と修羅 第二集」の「三〇一 秋と負債」