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丘陵地

きみのところはこの丘陵地のつゞきだらう
やっぱりこんな安山集塊岩だらう
そすると松やこならの生えかたなぞもこの式で
田などもやっぱり段になったりしてるだらう
いつころ行けばいゝかなあ
ぼくの都合は
まあ
来月の十日ころまでだ
木を植える場処やなにかも決めるから
ドイツ唐檜とパンクス松とやまならし
 やまならしにもすてきにひかるやつがある
白樺は林のへりと憩みの草地に植えるとして
あとは杏の青白い花を咲かせたり
きれいにこさえとかないと
なかなかいいお嫁さんなど行かないよ
雪が降りだしたもんだから
きみはストウブのやうに赤くなってるねえ
   ……水がごろごろ鳴ってゐる……
おや 犬が吠えだしたぞ
さう云っちゃ失敬だが
まづ犬のなかのカルゾーだな
喇叭のやうないゝ声だ
   ……ひのきのなかの
     あっちのうちからもこっちのうちからも
     こどもらが叫びだしたのは
     犬をけしかけてゐるのだらうか
     それともおれたちを気の毒がって
     とめやうとしてゐるのだらうか……
ははあ きみは日本にっぽん犬ですね
  黄いろな耳がちょきんと立って
  積藁の上にねそべってゐる
  顔には茶いろな縞もある
どうしてぼくはこの犬を
こんなにばかにするのだらう
やっぱりしやうが合はないのだな
   ……どうだ雲が地平線にすれすれで
     そこに一条 白金環さへできててゐる ……


掲載誌「銅鑼」第五号(1924年10月27日)
関連作品:「春と修羅 第二集」の「一七 丘陵地を過ぎる」