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ワルツ第CZ号列車

空気がぬるみ沼には水百合の花が咲いた
むすめ達はみなつややかな黒髪をすべらかし
あたらしい紺のペツテイコートや
また春らしい水いろの上着
プラットホームの陸橋の所では
赤縞のずぼんをはいた老楽長が
そらこんな工合だといふ ふうで
楽譜をよんできかせてゐるし
山脈はけむりになってほのかに流れ
鳥は燕麦のたねのやうに
いくかたまりもいくかたまりも過ぎ
青い蛇はきれいなはねをひろげて
そらのひかりをとんで行く
ワルツ第CZ号列車は
まだ向ふのぷりぷり顫ふ地平線に
その白いかたちを見せてゐない。
            (プレリュード)


掲載誌「貌」第三号(1924年9月15日)
関連作品:「春と修羅 第二集」の「一八四 春」