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一〇五二

ドラビダ風

一九二七、五、一、

生温い風が川下から吹いて
砂土が乾き草も乾く
ドラビダ風のかつぎして
紺紙の雲に踊るやうに耕し
また吐息して牛糞を盛り往来する
   カルマは旋り
   日は熟す
楊の芽みな黄いろにぼうけ
川は空諦と銀とを流し
生温い風が南から吹いて吹いて
植えたキャベヂが萎れて白くひるがへる
   梵の教衆の哂ひは遠く
   チーゼル
   ダイアデム
   緑いろした地しばりの蔓
風は白い砂を吹く吹く
もういくつの小さな砂丘が
畑のなかにできたことか
汗と戦慄
牛糞に集るものは
迦須弥から来た緑青いろの蠅である
   ヴェッサンタラ王婆羅門に王子を施したとき
   紺いろをした山の稜さへふるえたのだ
右へまはれ
左へまはれ
汗も酸えて風が吹く吹く
   もし摩尼の珠を得たらば
   まづすべての耕者と工作者から
   日に二時間の負ひ目を買はう