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一〇〇九

運転手

一九二七、三、一九、

電信ばしらの乱立と
   ……ベンベロ取りさ行がなぃが……
   ……あしたやすみだべ……
 Type
  a form  ………洋電機株式会社
   on off
おれはいま巨きな演奏家たちが
ピアノを弾き出す前のやうに
平らにだ輪に掌を置く
 
 ファーストスロープ
こゝを過ぎればもう一キロほど
   見とほしの利く直線なんだ
     藍いろの山のこっちの
     蕈のかたちの松ばやし
     防火線白くめぐり
 
 Up一 二 五
  ……子供らそばで電車を見やうとかけるかける
    その雪ばかまの短い脚したこどもらよ
    黝ずむ松のむらばやし……
 
第二スロープ ダウン 一 三 二
  M──1/2 ← 三 三
はん、材料置場第二号
もうはんのきとかはやなぎ
瀬川の岸にもうやってきた
寒さで線路はよれて
  平夷な岡と三角山
 
注意鳴笛
それやった
 橋だぞ橋だぞ
 濁った川だ
 誰か泥棒のやうに
黒い脚で横へそれた
 ひばのかきね。

いろいろな反感とふゞきの中で
いつ東の雲はうるんで甘く
クレオソートを塗られた電しんばしらも鳴り
町の上では
赤れん瓦の農業倉庫も
黒い陸橋も
はげしい風の火も燃える