目次へ  縦書き

俳句


岩と松峠の上はみぞれのそら
 
五輪塔のかなたは大野みぞれせり
 
つゝじこなら温石石のみぞれかな

   【詩「一六 五輪峠」下書稿(二)】


おもむろに屠者は呪したり雪の風
 
鮫の黒肉わびしく凍るひなかすぎ

   【詩「四一五 〔暮れちかい ふぶき
の底の店さきに〕」下書稿(二)】


霜光のかげらふ走る月の沢
 
西東ゆげ這ふ菊の根元かな

   【詩「四一〇 車中」下書稿裏面】


風の湖乗り切れば落角の浜
 
鳥の眼にあやしきものや落し角

   【詩「楊林」下書・未定稿】


自炊子の烈火にかけし目刺かな
 
目刺焼く宿りや雨の花冷に

   【詩「職員室」未定稿】


鷹〔たか〕呼ぶやはるかに秋の濤猛り
 
蟇ひたすら月に迫りけり

   【奉書紙】


鳥屋根を歩く音して明けにけり
 
ごみごみと降る雪ぞらの暖かさ

   【奉書紙】


魚燈して霜夜の菊をめぐりけり
 
灯に立ちて夏葉の菊のすさまじさ
 
斑猫は二席の菊に眠りけり(東北大会)
 
緑礬をさらにまゐらす旅の菊(東北大会)
 
たそがれてなまめく菊のけはひかな(東北大会)
 
魚燈してあしたの菊を陳べけり(東北大会)
 
夜となりて他国の菊もかほりけり(東北大会)
 
狼星をうかゞふ菊の夜更かな
 
その菊を探りに旅へ罷るなり
 
たうたうとかげらふ涵す菊の丈
 
秋田より菊の隠密はいり候
 
花はみな四方に贈りて菊日和
 
菊株の湯気を漂ふ羽虫かな
 
水霜をたもちて菊の重さかな

   【「装景手記」ノート】


狼星をうかゞふ菊のあるじかな
 
大管の一日ゆたかに旋りけり

   【無罫詩稿用紙】