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     谷


「よべはかの慈悲心鳥じふいちの族  よもすがらけたゝましきに
このひごろ痛むみうちの  いかにともなれとおもひし」

 ぜんまいの茂みは黒く  花咲ける藪はほのかに
 焼石の峯をかすむる  いくひらのしろがねの雲

「立ちいでゝ鳥をおどかし  からくまたねむるとすれば
崖よりぞ朽ちし石かけ  ひまもなくまろび落ちしか」

 とろとろと赤き火を燃し  まくろなる樺の梢を
 まみ赤くうちすかしつゝ  老のそまかなしく云ひぬ