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     穂孕期

蜂蜜いろの夕陽のなかを
みんな渇いて
稲田のなかの萱の島
観音堂へ漂ひ着いた
いちにちの行程は
ただまつ青な稲の中
眼路をかぎりのその水いろの葉筒の底で
けむりのやうな1ミリの羽
淡い稲穂の原体が
いまこつそりと形成され
この幾月の心労は
ぼうぼう東の山地に消える
青く澱んだ夕陽のなかで
麻シャツの胸をはだけてしやがんだり
帽子をぬいで小さな石に腰かけたり
みんな顔中稲で傷だらけにして
かをつて酸つぱいあんずをたべる
みんなのことばはきれぎれで
知らない國の原語のやう
ぼうとまなこをめぐらせば
青い寒天のやうにもさやぎ
むしろ液體のやうにもけむつて
此の堂をめぐる萱むらである