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     氷質の冗談(作品第四〇一番)

職員諸兄 學校がもう砂漠のなかに来てますぞ
杉の林がペルシャなつめに変つてしまひ
はたけも藪もなくなつて
そこらはいちめん氷凍された砂けむりです
白淵先生 北緯三十九度邊まで
アラビア魔神が出て来ますのに
大本山からはなんにもお振れがなかつたですか
さつきわれわれが教室から歸つたときは
そこらは賑やかな空気の祭
青くかゞやく天の椀から
ねむや鵞鳥の花も胸毛も降つてゐました
それからあなたが進度表などお綴ぢになり
わたくしが火をたきつけてゐたそのひまに
あの妖質のみづうみが
ぎらぎらひかつてよどんだのです
えゝ さうなんです
もしわたくしがあなたの方の管長ならば
こんなときこそ布教使がたを
みんな巨きな駱駝に乗せて
あのほのじろくあえかな霧のイリデスセンス
蛋白石のけむりのなかに
もうどこまでもだしてやります
そんな砂漠の漂ふ大きな虚像のなかを
あるひはひとり
あるひは兵士や隊商連のなかまに入れて
熱く息づくらくだのせなの革嚢に
世界の辛苦を一杯につめ
極地の海に堅く封じて沈めることを命じます
そしたらたぶんそれは強力な龍にかはつて
地球一めんはげしい雹を降らすでせう
そのときわたくし管長は
東京の中本山の玻璃臺に顱頂部だけをてかてか剃つて
二人の侍者に香爐と白い百合の花とをさゝげさせ
空を仰いでごくおもむろに
龍をなだめる二行の迦陀をつくります
いやごらんなさい
たうとう新聞記者がやつてきました