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     鑛染とネクタイ(作品第三六六番)

蝎の赤眼が南中し
くはがたむしがうなつて行つて
房や星雲の附属した
青じろい浄瓶星座が出てくると
そらは立派な古代意慾の曼陀羅になる
  ……峡いつぱいに蛙がすだく……
    (こゝらのまつくろな蛇紋岩には
     イリドスミンがはいつてゐる)
ところがどうして
世界ぜんたいもうどうしても
あいつが要ると考へだすと
空いちめんがイリドスミンの鑛染だ
  ……虹のいろした野風呂の火……
南はきれいな夜の飾窓シヨウウヰンドウ
蝎はひとつのまつ逆さまに吊るされた、
夏ネクタイの廣告で
赤眼はくらいネクタイピンだ