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     旅程幻想(作品第三五六番)

さびしい不漁と旱害のあとを
海に沿ふ
いくつもの峠を越えたり
萱の野原を通つたりして
ひとりこゝまで来たのだけれども
いまこの荒れた河原の砂の
うす陽のなかにまどろめば
肩またせなのうら寒く
何か不安なこの感じは
たしかしまひの硅板岩の峠の上で
放牧用の木柵の
楢の扉を開けたまゝ
みちを急いだためらしく
白い扉を
元の通りにしなかつたのか
そこの光つてつめたいそらや
やどり木のある栗の木なども眼にうかぶ
その川上の幾重の雲と
つめたい日射しの格子のなかで
かすかに
何か知らない巨きな鳥が
かすかにごろごろ鳴いてゐる