目次へ  縦書き

     郊外(作品第三二四番)

卑しくひかる亂雲が
ときどき凍つた雨をおとし
野原は寒くあかるくて
水路もゆらぎ
穂のない粟の塔も消される
   鷹は鱗を片映えさせて
   まひるの雲の下底をよぎり
   ひとはちぎれた海藻を着て
   煮られた鹽の魚をおもふ
西はうづまく風のへり
紅くたゞれた錦の皺を
つぎつぎ伸びたりつまづいたり
亂積雲のわびしい影が
まなこのかぎり南へ滑り
山の向ふの秋田のそらは
かすかに白い雲の髪
   毬をかゞげた二本杉
   七庚申の石の塚
たちまち山の襞いちめんを
霧が火むらに燃えたてば
江釣子森の松むらばかり
黒々として溶け殘り
人はむなしい幽靈冩眞
たゞぼんやりと風を見送る