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     寄鳥想亡妹(作品第一五六番)

この森を通りぬければ
みちはさつきの水車へもどる
鳥がぎらきら啼いてゐる
たしか渡りのつぐみの群だ
夜どほし銀河の南のはじが
白く光つて爆發したり
螢があんまり流れたり
おまけに風がひつきりなしに樹をゆするので
鳥は落ちついて睡られず
あんなにひどくさわぐのだらう
けれども
わたくしが一あし林のなかにはいつたばかりで
こんなにはげしく
こんなに一そうはげしく
まるでにわか雨のやうになくのは
何といふおかしなやつらだらう
こゝは大きなひばの林で
そのまつ黒ないちいちの枝から
あちこち空のきれぎれが
いろいろにふるへたり呼吸したり
云はばあらゆる年代の
光の目録カタログを送つてくる
  ……鳥があんまりさわぐので
    私はぼんやり立つてゐる……
みちはほのじろく向ふへながれ
一つの木立の窪みから
赤く濁つた火星がのぼり
鳥は二羽だけいつかこつそりやって来て
何か冴え冴え軋つて行つた
あゝ風が吹いてあたゝかさや銀の分子モリキル
あらゆる四面體の感觸を送り
螢が一そう亂れて飛べば
鳥は雨よりしげくなき
わたくしは死んだ妹の聲を
林のはてのはてからきく
  ……それはもうさうでなくても
    誰でも同じことなのだから
    またあたらしく考へ直すこともない……
草のいきれとひのきのにほひ
鳥はまた一さうひどくさわぎだす
どうしてそんなにさわぐのか
田に水を引く人たちが
抜き足をして林のへりをあるいても
南のそらで星がたびたび流れても
べつにあぶないことはない
しづかに睡つてかまはないのだ