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     鳥の遷移(作品第二七番)

鳥がいつぴき葱緑の天をわたつて行く
わたくしは二こゑのかくこうを聴く
からだがひどく巨きくて
それにコースも水平なので
誰か模型に弾条バネでもつけて飛ばしたやう
それだけどこか気の毒だ
鳥は遷り
さっきの聲は時間の軸で青い鏃のグラフをつくる
  ……きららかに畳む山彙と
    水いろのそらの縁邊……
鳥の形はもう見えず
いまわたくしのいもうとの
墓場の方で啼いてゐる
  ……その墓森の松のかげから
    黄いろな電車がすべつてくる
    ガラスがいちまいふるへてひかる
    もう一枚がならんでひかる……
鳥はいつかずつとうしろの
煉瓦工場の森にまはつて啼いてゐる
あるひはそれはべつのかくこうで
さつきのやつはまだくちばしをつぐんだまゝ
水を呑みたさうにしてそらを見上げながら
墓のうしろの松の木などに、
とまつてゐるかもわからない
      そんな圖形は鳥の啼くのと啼かないとの
      かういふ盈虚のなかにもあれば
      あの質樸な音譜のうちにもはいつてゐる
      第六交響曲のなかでなら
      もつとひらたく投影される