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     牛(作品第一二六番)

一ぴきのエーシヤ牛が
草と地靄に角をこすつてあそんでゐる
うしろではパルプ工場の火照りが
夜なかの雲を焦がしてゐるし
低い砂丘の向ふでは
海がどんどん叩いてゐる
しかもじつに掬つても呑めさうな
黄銅いろの月あかりなので
牛はやつぱり機嫌よく
こんどは角で柵を叩いてあそんでゐる