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     春(作品第九〇番)

祠の前のちしやのいろした草はらに
木影がまだらに降つてゐる
   ……鳥はコバルト山に翔け……
ちしやのいろした草地のはてに
杉がもくもくならんでゐる
   ……鳥はコバルト山に翔け……
那智先生の筆塚が
青ぐもやまた氷雲の底で
びたのかたちの粉苔をつける
   ……鳥はコバルト山に翔け……
二本の巨きなとゞまつが
荒さんで青く塚のうしろに立つてゐる
   ……鳥はコバルト山に翔け……
樹はこの夏の計画を
蒼々として雲に描く
   ……鳥はあつちでもこつちでも
     朝のピツコロを吹いてゐる……