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     海蝕臺地(作品第四五番)

日がおしまひの六分圏セキスタントにはいつてから
そらはすつかり鈍くなり
臺地はかすんではてない意慾の海のやう
  ……かなしくもまたなつかしく
    斎時の春の胸を噛む
    見惑塵思の海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
粛々起伏をつゞけながら
あえかなそらのけむりにつゞく
  ……それはひとつの海蝕臺地
    古いカルパの紀念碑である……
たよりなくつけられたそのみちをよぢ
憔悴苦行の梵土をまがふ
坎可かんかな高原住者の隊が
一れつ陰いろの馬をひいて
つめたい宙のけむりに消える