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     小岩井農場  パート二

へたなたむぼりんも遠くのそらで鳴つてるし
雨はけふはだいぢやうぶふらない
しかし馬車もはやいと云つたところで
そんなにすてきなわけではない
いままでたつてやつとあすこまで
ここからあすこまでのこのまつすぐな
火山灰のみちの分だけ行つたのだ
あすこはちやうどまがり目で
すがれの草穂もゆれてゐる
  (山は青い雲でいつぱい 光つてゐるし
   かけて行く馬車はくろくてりつぱだ)
ひばり ひばり
銀の微塵のちらばるそらへ
たつたいまのぼつたひばりなのだ
くろくてすばやくきんいろだ
そらでやるブラウン運動
おまけにあいつのはねときたら
甲蟲のやうに四まいある
飴いろのやつと硬い漆ぬりの方と
たしかに二重ふたへにもつてゐる
よほど上手に鳴いてゐる
そらのひかりを呑みこんでゐる
もちろんずつと遠くでは
もつとたくさんないてゐる
そいつのほうははいけいだ
そこで向ふの方からは
こつちのやつがごく勇敢に見えるのだらう
うしろから五月のいまごろ
黒いながいオーヴァを着た
醫者らしいものがやつてくる
たびたびこつちをみてゐるやうだ
たつたひとりで一本みちを行くときに
ごくありふれたことなのだ
冬にもやつぱりこんなあんばいに
くろいイムパネスがやつてきて
本部へはこれでいいんですかと
遠くからことばの浮標ブイをなげつけた
でこぼこのゆきみちを
辛うじて咀嚼するといふ風にあるきながら
本部へはこれでいゝんですかと
心細さうにきいてゐた
おれはぶつきら棒にああと言つただけなので
ちやうどそれだけ大へんかあいさうな氣もした
けふはもつと遠くからくる