目次へ  縦書き

法華堂建立勧進文

教主釈迦牟尼正偏知けふしゅしゃかむにしゃうへんち
涅槃の雲に入りましてねはんのくもにいりまして
正法千は西の天しゃうほうせんはにしのてん
余光に風も香はしくよかうにかぜもかぐはしく
像法千は華油燈のぞうほうせんはともしびの
影堂塔に照り映えきかげどうたうにてりはえき
仏滅二千灯も淡くぶつめつにせんひもあわく
劫の濁霧の深くしてごうのぢょくむのふかくして
権迹みちは繁ければごんじゃくみちはしげければ
衆生ゆくてを喪ひてしゅじゃうゆくてをうしなひて
闘諍堅固いや著くたうじゃうけんごいやしるく
兵疾風火競ひけりへうしつふうくわきそひけり
この時地涌の上首尊このときぢゆのじょうしゅそん
本化上行大菩薩ほんげじゃうげうだいぼさつ
如来の勅を受けましてにょらいのちょくをうけまして
末法救護の大悲心まっぽうくごのだいひしん
青蓮華咲く東海のしゃうれんげさくたうかいの
朝日とともに生れたもふあさひとともにあれたもふ
百たび開く大蔵はももたびひらくだいぞうは
久遠に契ふ信の鑰くおんにかなふしんのかぎ
諸山の雑は精進のしょざんのざうはしゃうじんの
鏡に塵の影もなしかがみにちりのかげもなし
正道すでに証あればしゃうだうすでのしゃうあれば
法鼓は雲にとどろきてほっくはくもにとどろきて
四箇格言の判高くしかかくげんのはんたかく
要法下種の旨深しやうほうげしゅのむねふかし
街衢に民を誨へてはかいくにたみをおしへては
刀杖瓦石いと甘くたうじゃうぐわしゃくいとあまく
要路に国を諌むればやうろにくにをいさむれば
流罪死罪も尚楽しるざいしざいもなほたのし
色身に読む法華経はしきしんによむほけきゃうは
雪のしとねに風の飯ゆきのしとねにかぜのいひ
水火審さにそのかみのすゐくわつぶさにそのかみの
勧持の讖を充てましぬくわんじのしんをみてましぬ
三度諌めて人昏くみたびいさめてひとくらく
民に諸難のいや増せばたみにしょなんのいやませば
いまは衢の塵を棄ていまはちまたのちりをすて
ひたすら国を祷らんとひたすらくにをいのらんと
領主の請をそのままにりゃうしゅのこひをそのままに
入るや甲州波木井郷いるやかうしゅうはぎりがう
霧は不断の香を焚ききりはふだんのかうをたき
風とことはに天楽のかぜとことはにてんがくの
身延の山のふところにみのぶのやまのふところに
聖化末法万年のしゃうけまっぽうまんねんの
法礎を定め給ひけりほうそをさだめたまひけり
そのとき南部実身郷そのときなんぶさねながきゃう
法縁いとどめでたくてほうえんいとどめでたくて
外護の誓のいと厚くげごのちかひのいとあつく
或ひは餞を奉りあるひはせんをたてまつり
或ひは堂を興しつつあるひはだうをおこしつつ
供養を励み給ひしがくやうをはげみたまひしが
やがては帰る本誓のやがてはかへるほんぜいの
墨の衣と身をなしてすみのころもとみをなして
堤婆の品もそのまゝにだいばのほんもそのままに
給仕のつとめおはしけるきうじにつとめおはしける
帰命心王大菩薩きめうしんわうだいぼさつ
応現化をば了へましておうげんけをばをへまして
浄楽吾浄花深きじゃうらくがじゃうはなふかき
本土に帰りまししよりほんどにかへりまししより
向興諸尊ともろともにかうこうしょそんともろともに
聖舎利を守り給ひつゝせうしゃりをもりたまひつつ
法潤いよよ深ければほうにんいよよふかければ
流れは清き富士川のながれはきよきふじがはの
み末も永く勤王とみすゑもながくきんわうと
外護に誉を伝へけりげごにほまれをちたへけり
后事ありて陸奥のもちごとありてみちのくの
遠野に封を替へ給ひとほのにほうをかへたまひ
辺土の民も大法のへんどのたみもたいほうの
光隈なき仁政のひかりくまなきじんせいの
徳化四辺に及びつゝとくくわしへんにおよびつつ
永く遺宝を伝へしがながくいほうをつたへしが
当主日実上人はたうしゅにつじつしゃうにんが
俗縁法縁相契ひぞくゑほうゑんあひかなひ
祖道をここに興起してそだうをここにこうきして
末世の衆生救はんとまつせのしゅじゃうすくはんと
悲願はやがて灌頂のひぐわんはやがてかんてふの
祖山に修を積み給ふそざうにしゅうをつみたまふ
奇しき縁は花巻のくしきえにしははなまきの
優婆塞優婆夷契りありうばしくうばゐちぎりあり
法筵数も重なればほうゑんかずもかさなれば
諸人ここに計らひてもろびとここにはからひて
新たに一宇を建立しあらたにいちうをこんりうし
たとへいらかはいぶせくもたとへいらかはいぶせくも
信楽衆は質直のしんげふしゅうはしつじきの
至心に請じ奉りししんにしゃうじたてまつり
聖宝ともに安らけくせうぼうともにやすらけく
この野の護り世の目ざしこのののまもりよのめざし
未来に遠く伝へんとみらいにとほくつたへんと
浄願ここに結ばれぬじゃうがんここにむすばれる
いま仏滅の五五を超えいまぶつめつのごごをこえ
劫の濁りはいや深くごうのにごりはいやふかく
われらは重き三毒のわれらはおもきさんどくの
業の焔に身を灼けりごうのほむらにみをやけり
泰西成りし外の学はたいせいなりしげのがくは
口耳の証を累ね来てこうじのしゃうをかさねきて
傲りはやがて冥乱のおごりはやがてめいらんの
諸仏菩薩を詐と謗りしょぶつぼさつをさとそしり
三世因果を撥無しぬさんぜいんぐわをはつむしぬ
阿僧祇法に遭はずしてあそうぎほうにあはずして
心耳も昏く明を見ぬしんにもくらくめいをみぬ
罪の衆生のみなともにつみのしゅじゃうのみなともに
競ひてこれに従へばきそふてこれにしたがへば
人道疾く地に堕ちてじんだうはやくちにおちて
邪見鉄囲の火を増しぬじゃけんてつゐのひをましぬ
皮薄の文化世に流れひはくのぶんくわよにながれ
五慾の楽は日に増せどごよくのらくはひにませど
本を治めぬ業疾のもとをおさめぬごうしつの
苦悩はいよよ深みたりくなふはいよよふかみたり
さればぞ憂悲を消さんとてさればぞうひをけさんとて
新に憂苦の具を求めあらたにうくのぐをもとめ
互に競ひ諍へばたがひにきそひあらそへば
こは人界か色も香もこはにんかいかいろもかも
鬼畜の相をなしにけりきちくのさうをなしにけり
菩薩衆生を救はんとぼさつしゅじゃうをすくはんと
三悪道にいましてはさんあくだうにいましては
たゞひたすらに導きてただひたすらにみちびきて
辛く人果に至らしむからくにんくわにいたらしむ
衆生この世に生れ来てしゅじゃうこのよにいまれきて
虚仮の教に踏み迷ひこけのをしへにふみまよひ
ふたたび三途に帰らんはふたたびさんづにかへらんは
痛哭誰か耐ふべしやつうこくたれかたふべしや
法滅相は前にありほうめつさうはまへにあり
人界生はいや多しにんがいしゃうはいやおほし
仏弟子ここに逸ければぶつでしここにやすければ
慳貪とがは免れじけんどんとがはまぬかれじ
信士女なかに貪らばしんしにょなかにむさぼらば
諸仏の仇と身をなさんしょぶつのあだとみをなさん
世界は共の所感ゆゑせかいはぐうのしょかんゆゑ
毒重ければ日も暗くどくおもければひもくらく
饑疾風水しきりにてきしつふうすゐしきりにて
兵火も遂に絶えぬなりへいくわもつひにたえぬなり
正信あれば日も清くしゃうしんあればひもきよく
地は自から厳浄のちはおのづからごんじゃうの
五風十雨の世となりてごふうじゅううのよとなりて
招かで華果の至るなりまねかでけくわのいたるなり
世の仏弟子と云はんひとよのぶつでしといはんひと
この法滅の相を見ばこのほうめつのさうをみば
仏恩報謝このときとぶつおんほうしゃこのときと
共に力を仮したまへともにちからをかしたまへ
木石一を積まんともぼくせきいちをつまんとも
必ず仏果に至るべくかならずぶつくわにいたるべく
若し清浄の信あらばもししゃうじゃうしんあらば
永く三途を離るべしながくさんづをはなぐべし

虔みて需文の諸士に曰う  小輩
外学薫習既に久しく 心口尽く相応せず 所作冥誤多く蕪辞推 敲に耐えず 殊に史伝之を審にせず惣卒の間之を作る 必ず仏 罰を蒙らん。
諸賢希くは憚ることなく諸過を正し名分を明にし辞句を洗練し て 小輩 の罪を治し給へ 若し幸に補綴聖業に資せば 作者 は 七面講同人 或は 東都文業某 となして 小輩 の名を 出すなからんことを。 必嘱!