目次へ  縦書き

肥料用炭酸石灰

(略)

農業上石灰の効用

 今迄いろいろの事情から、石灰が、理論通りの効力を発揮するこ とができなかったゝめ、誤解されたり認められなかったりしてゐた 点もありますので、今更ながら改めてその効用の数種を挙げて見ま す。

一.石灰は直接に作物の栄養です。但しこの意味に要する石灰は水 稲等では少量でありますが、根菜類、果樹類。荳科作物、蕎麦、玉 蜀黍、桑などでは相当量に達します。

 参照(略)

二、石灰は間接の窒素肥料です。石灰は空気中の遊離窒素を固定す るアゾトバクターや根瘤菌の作用を完全にし、又一般有機物分解菌 の繁殖を助けて、土壌中に腐植質刈株草根等の窒素を間接に作物に 供給いたします。

 参照(略)

三、石灰は間接の加里肥料です。石灰は土壌中の不溶性の加里化合 物(ある種珪酸加里等)に働いて、その加里を可溶性にし作物に供 いたします。

 参照(略)

四、石灰は間接の燐酸肥料です。石灰は不溶性の燐酸鉄や燐酸礬土 を比較的溶解し易い燐酸二石灰や或は三石灰に変じ徐々に作物に供 給します。

 参照(略)

五、石灰は土壌の酸性を中和します。酸性の土壌には、大麦紫雲英 豆類菠薐草蒿苣をはじめとして多くの作物が或は生育せず、或は収 量が充分でありません。桑も亦酸性の土壌では収量も少なく桑葉の 品質も悪くこれを用ひてできた繭は量質共に甚だ劣ります。

 この酸性土壌を中和するのに石灰が最も有効なことはご承知の通 であります。

六、石灰は土壌中に気水の透過を適量にし温熱の滲透を充分にしま す。

 参照(略)

七、石灰は肥料の能率を増進させます。石灰は緑肥厩肥粕類藁稈等 を速やかに分解せしめ、且つそこにできる有機酸を中和し或は過燐 酸硫安等の酸性を結局中和し、或はこれらの肥料要素が流亡するの を防ぐ等の作用をします。(略)

炭酸石灰の特性

 さて本邦は多雨湿潤な関係から耕地の九割は酸性で、且つ年々反 当り4貫から二十数貫ぐらいづゝ石灰が減耗してゐるとされてゐま す。

 ところがこれに対し従来本邦で用ひられてゐた肥料用石灰は、大 部分消石灰と生石灰でありまして、之等も畑地重粘土の改良や鉱毒 の防除乃至急激に作用せしめたい際には申し分ないものではありま すが、一般に肥料としてまた酸性の中和用としては、どうも時々用 ひにくい点があるのであります。それはこれらの苛性石灰が余りに 速効で一時に土壌中の殖腐質や有機肥料を分解するために作物成育 の前期には栄養上過剰なくらゐまで窒素が作物に供給され後期には 寧ろ肥切れの感をなすことが往々なのであります。このため稲では 稲熱病に罹ったり成熟前に倒れたり、さうでなくても藁が細工に適 せず、子実が脆くて色沢も悪く砕けも搗減も多いやうな結果を見る のは普通であります。

 元来、施肥の設計では、どの作物でも成育の前期に吸収させる分 と中期後期に供給する分とを充分順序よく考慮しなければ集約度普 通以下の栽培では、或は不良の天候に耐えず、或は熟期遅れ、或は 生産物の品質劣り、或は収量を減ずる等不利の結果を見るのが普通 であります。

 ところがいづれの作物でも、その前期よりは中期から後期へかけ て多量の養分を要し、現に水稲でも中晩生のものは緩効な窒素肥料 を十分与へなければ、どうも大きな穂、しっかりした実入を見られ ないのであります。然るに窒素肥料では、緩効のものは速効の硫安 等に比して著しく割高でありますので、この点からも土壌中の窒素 を成育の後期に働くやうに仕向けることが肥料経済上最も必要なこ となのであります。

 参照(略)

 麦その他の禾穀類、桑果樹等に就ても略々同様で、ある期間だけ 窒素も石灰も燐酸も過剰にあり、あと却って不足勝ちになるのは多 くは好ましくないばかりでなく砂質の土壌ではいくら同時に石灰が 団粒を形成しても、どんどん硝酸態になって出てくる窒素を保留し 兼ねて、みすみす下層に流亡させてしまひ、石灰自身も同様となる 懼れが多々あります。

 斯に於てか我国でも諸外国でも緩効な炭酸石灰が盛んに用ひられ て来ました。実に炭酸石灰ならば、その粒子の精粗と形状とによっ て効果の遅速をどのやうにでも調節できるのであります。即ちこれ を土壌中に鋤き込めば、その最も微細なものは直ちに土壌中の炭酸 を含んだ水に溶けて重炭酸石灰になり、土壌の各部に浸透して種々 の作用を営むこと、消石灰生石灰と全く同じであり、残りは炭酸石 灰の微粒のまゝで土壌中に汎く散点しながら徐々に溶解され働くの であります。又土壌の酸性が鉱質で且つ非常に強いとき、消石灰で は少しばかり使ってもみな粘土に結合してしまって作物に影響が少 ないといふ場合に炭酸石灰の稍粗粒のものを相当用ひれば、直ちに 土粒部内には作用せず、植物の根がこれに触れて炭酸や蟻酸を出し てじぶんの必要な分だけを溶解し利用するといふやうな訳にもなり ます。

農業上石灰の効用

 今迄いろいろの事情から、石灰が、理論通りの効力を発揮するこ とができなかったゝめ、誤解されたり認められなかったりしてゐた 点もありますので、今更ながら改めてその効用の数種を挙げて見ま す。

一.石灰は直接に作物の栄養です。但しこの意味に要する石灰は水 稲等では少量でありますが、根菜類、果樹類。荳科作物、蕎麦、玉 蜀黍、桑などでは相当量に達します。

 参照(略)

二、石灰は間接の窒素肥料です。石灰は空気中の遊離窒素を固定す るアゾトバクターや根瘤菌の作用を完全にし、又一般有機物分解菌 の繁殖を助けて、土壌中に腐植質刈株草根等の窒素を間接に作物に 供給いたします。

 参照(略)

三、石灰は間接の加里肥料です。石灰は土壌中の不溶性の加里化合 物(ある種珪酸加里等)に働いて、その加里を可溶性にし作物に供 いたします。

 参照(略)

四、石灰は間接の燐酸肥料です。石灰は不溶性の燐酸鉄や燐酸礬土 を比較的溶解し易い燐酸二石灰や或は三石灰に変じ徐々に作物に供 給します。

 参照(略)

五、石灰は土壌の酸性を中和します。酸性の土壌には、大麦紫雲英 豆類菠薐草蒿苣をはじめとして多くの作物が或は生育せず、或は収 量が充分でありません。桑も亦酸性の土壌では収量も少なく桑葉の 品質も悪くこれを用ひてできた繭は量質共に甚だ劣ります。

 この酸性土壌を中和するのに石灰が最も有効なことはご承知の通 であります。

六、石灰は土壌中に気水の透過を適量にし温熱の滲透を充分にしま す。

 参照(略)

七、石灰は肥料の能率を増進させます。石灰は緑肥厩肥粕類藁稈等 を速やかに分解せしめ、且つそこにできる有機酸を中和し或は過燐 酸硫安等の酸性を結局中和し、或はこれらの肥料要素が流亡するの を防ぐ等の作用をします。(略)

炭酸石灰の特性

 さて本邦は多雨湿潤な関係から耕地の九割は酸性で、且つ年々反 当り4貫から二十数貫ぐらいづゝ石灰が減耗してゐるとされてゐま す。

 ところがこれに対し従来本邦で用ひられてゐた肥料用石灰は、大 部分消石灰と生石灰でありまして、之等も畑地重粘土の改良や鉱毒 の防除乃至急激に作用せしめたい際には申し分ないものではありま すが、一般に肥料としてまた酸性の中和用としては、どうも時々用 ひにくい点があるのであります。それはこれらの苛性石灰が余りに 速効で一時に土壌中の殖腐質や有機肥料を分解するために作物成育 の前期には栄養上過剰なくらゐまで窒素が作物に供給され後期には 寧ろ肥切れの感をなすことが往々なのであります。このため稲では 稲熱病に罹ったり成熟前に倒れたり、さうでなくても藁が細工に適 せず、子実が脆くて色沢も悪く砕けも搗減も多いやうな結果を見る のは普通であります。

 元来、施肥の設計では、どの作物でも成育の前期に吸収させる分 と中期後期に供給する分とを充分順序よく考慮しなければ集約度普 通以下の栽培では、或は不良の天候に耐えず、或は熟期遅れ、或は 生産物の品質劣り、或は収量を減ずる等不利の結果を見るのが普通 であります。

 ところがいづれの作物でも、その前期よりは中期から後期へかけ て多量の養分を要し、現に水稲でも中晩生のものは緩効な窒素肥料 を十分与へなければ、どうも大きな穂、しっかりした実入を見られ ないのであります。然るに窒素肥料では、緩効のものは速効の硫安 等に比して著しく割高でありますので、この点からも土壌中の窒素 を成育の後期に働くやうに仕向けることが肥料経済上最も必要なこ となのであります。

 参照(略)

 麦その他の禾穀類、桑果樹等に就ても略々同様で、ある期間だけ 窒素も石灰も燐酸も過剰にあり、あと却って不足勝ちになるのは多 くは好ましくないばかりでなく砂質の土壌ではいくら同時に石灰が 団粒を形成しても、どんどん硝酸態になって出てくる窒素を保留し 兼ねて、みすみす下層に流亡させてしまひ、石灰自身も同様となる 懼れが多々あります。

 斯に於てか我国でも諸外国でも緩効な炭酸石灰が盛んに用ひられ て来ました。実に炭酸石灰ならば、その粒子の精粗と形状とによっ て効果の遅速をどのやうにでも調節できるのであります。即ちこれ を土壌中に鋤き込めば、その最も微細なものは直ちに土壌中の炭酸 を含んだ水に溶けて重炭酸石灰になり、土壌の各部に浸透して種々 の作用を営むこと、消石灰生石灰と全く同じであり、残りは炭酸石 灰の微粒のまゝで土壌中に汎く散点しながら徐々に溶解され働くの であります。又土壌の酸性が鉱質で且つ非常に強いとき、消石灰で は少しばかり使ってもみな粘土に結合してしまって作物に影響が少 ないといふ場合に炭酸石灰の稍粗粒のものを相当用ひれば、直ちに 土粒部内には作用せず、植物の根がこれに触れて炭酸や蟻酸を出し てじぶんの必要な分だけを溶解し利用するといふやうな訳にもなり ます。