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[88] 1918年9月27日 保阪嘉内あて 封書(封筒ナシ)

復啓 昨夕早池峯山附近の地質調査より帰りて貴簡拝誦仕り候

先以て今回は東京御研学の事と決定相成り候段奉大賀候

小生も事情さへ許すならば出京勉学致し度く候へども只今の処にては家事上並に身体上の都合に依り蓋ろ小生を以て可能とする範囲の労働に従事致すを以て最適とする次第に御座候

最早林業にて農業にても小生に小生の家庭(父母)が希望する職業に於て小生の家に対する本務を尽し度き考に有之候

但し今後の繋累は断じて作らざる決心に御座候

昨日にて本郡の地質調査は全く完成仕り候

今後は唯一週間の出校を要するのみに有之他は当地にて当分質屋廢業の残務に手伝ふ積りに御座候

涼秋の候切に貴兄の御奮励を祈り奉り併せて小菅氏の平穏なる航海を希望仕り候

敬具

   大正七年九月二十七日             宮沢賢治

 保阪嘉内様