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[80] 1918年7月20日 宮澤政次郎あて 封書〔托便〕

(表)稗貫郡花巻川口町 宮澤政次郎様 親展
(裏)大正七年七月廿日 宮澤賢治(封印)緘

拝啓 本日正午近く関教授を私宅に訪問の上退学の旨申し候。

紫波郡は謝絶の事と定まり稗貫郡も又私の退学を理由として止め候様に相成り候。

然るに稗貫郡は右の次第にては誠に気の毒なる次第に有之遂に次の昨日御許可を得たる処を提出して尚今後も続くる様頼み置き候。

 本年中に北上川以西(十五日間)の調査
 北上川以東の大体の調査(明年六月迄)(十五日間)
 調査報文(本年中)
 調査報文を書くとき一週間の出校

右は単に私一存にて宅にて之を許可するや否や又医師が私の踏査を許すや否や明ならざる旨は申し置き候。

次に今迄に受けたる給料返却の旨折角申し候へども遂に聞き入れられず当分その儘と致すべく候。

午后安田銀行に御手紙を持参し茲に同封の用紙二枚受け取り候。

次に鈴木医師の診察を求め候処歩きても差支なしと申し候。

尚今朝郡長にも会ひて大体退学の話を致し置き候

いつも御願のみ致し候へども今回の関先生との約束のみは宅の都合の許す限り果し得る様奉願候。免も角家事を見る為に四日以上も引き続きて外出は全然不可能なるべき由申し置き候  先は以上のみ御通知迄

敬具

  父上様

賢治

  尚二十七日又は二十八日夜に帰家仕るべく候。
   裏面に追記有之候

尚七月二十七八日帰り候後は八月一杯位は勿論全く野外に出でざるも差支無之九月十月十一月中に充分の時間も有之べく候間若し御都合さへ宜しくぱ八月中八景か又はどこかの温泉にでも御転居相成され候ては如何に御座候や

私は充分注意致して留守居仕るべく候間何卒然るべく御保養の御計画を御作り願ひ上げ候

又一昨日丸善より、先に注文致し置きたる洋書一冊到着の由通知有之振替にて金五円五十八銭送り、花巻宛にて発送候様指定致し置き候間明日か明後日にても配達有之候はゞ何卒御受取置被成下度候 荷物は最要なる書籍のみを持ち帰り候間封印を御検査下され停車場より御受取奉願候