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[474] 1933年5月18日 森佐一あて 封書

(表)盛岡市惣門 森 惣一様
(裏)五月十八日 花巻町 宮沢賢治拝(封印)〆

お手紙拝誦いたしました。

十四日にその社の松田さんが徳弥さんといっしにおいでゞ原稿のおはなしがありました。それであなたの作品と隣り合せに出す条件でさしあげる事にいたしたのでしたからどうかその辺ご承知ねがひ上げます。

徳弥さんはこの頃のを出せとのことでしたが病気からこっちは殆ど短い文語の定型のものばかりで自信もなく困ってゐましたがあなたの方で古いのでいゝとなれば実に気楽です。

何の詩らしきもの心象スケッチ、あなたといっしょだったあの岩手山の下の朝を清書しました。どうか何べんもお読み下すってこんな調子に書いたあなたがこれでいゝかどうか ことに「幻」がいゝか佐一がいゝか 佐一の方が詩としてはいゝやうですが事実を離れる所がありその辺適宜ご決定下さい。もし原稿別のがよければ葉書一つ下さい。すぐ送ります。

暖かになりました。お気の向いた節にはお出でを待ちます。

石川さんの一週忌も近くなりました。詩集校正中との事ですがやっぱり出版の費用が纏まらないのでせうか。

  尚又。