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[445] 1933年1月7日 菊地武雄あて 封書

(表)東京市吉祥寺一八七五 菊地武雄様
(裏)一月七日 岩手県花巻町 宮沢賢治拝(封印)〆

  一月七日

明けましておめでたう存じます。

一昨秋は大へんご心配をお掛けしたりお世話になったりして、殊にどう変るかも知れない病人をご自宅へお連れ下さるといふやうなお詞まであったので、帰ってだんだんよくなってもちょっとさらさらとお礼の手紙も書けさうなく、重苦しくご無沙汰いたしてしまひました。やっと少しづつ下らない仕事して居ります。しかしもう一昨年位の健康はちょっと取り戻せさうにもありません。それでもどうでもこの前より美しいいゝ本の数冊をつくりあげる希望をば捨て兼ねて居ります。何卒ご鞭撻ねがひ上げます。前、童話集を出した光原社、及川四郎氏同封の場処へ出ましたさうで、美術関係の仕事ですから、おひまありましたら、お立ち寄り、何かにお心づけ下さらば出京梶X甚力強いだらうと存じます。どうもご挨拶とも何ともつかないおかしな手紙になってしまひました。乍末筆切に新歳の御多祥を祈り奉ります。

  菊池武雄様
    御家内様

宮沢賢治