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[429](1932年9月23日)藤原嘉藤治あて 封書

(表)花巻高等女学校内 藤原嘉藤治様 祝詞
(裏)二十三日 一町民

今夕の放送之を聴けり。

始めたゞ遇障なきを希ふのみ。而も奏進むや、泪茫乎たり。その清純近日に比なきなり。

身額ひ病胸熱してその全きを祷る。事恍として更に進めり。最后の曲後半に至りて伴奏殆んどしんに会す。奏了りて声を挙げよろこび泣く。弟妹亦枕頭に来って祝せり。凡そ今夕意を迎へて聴けるにあらず。たゞ鍛へたるものは鍛へたるもの、よきものはよきものなり。

更に盛岡の演あらん。翼くは餐を重んじ煙を節して身を興奮より護られんことを。

   二十三日夜

  藤原嘉菟治様

宮沢賢治