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[428] 1932年9月20日 吉野信夫あて 封書

(表)新潟市旭町二 詩人時代社 吉野信夫様
(裏)九月二十日 岩手県花巻町豊沢町 宮沢賢治(封印)〆

永い間いろいろご好意をいたゞきながら、失礼ばかりいたして居りました。

この数年、意久地なく疾みまして、たゞもう、事からも人からも、遠ざかり遁げるやうにばかりして居ました次第、悪しからずご諒察ねがひます。

今日俄かに例のスケッチなど、それもなににもならない古いもの、お送りいたすなどあんまり厚かましい思ひます。けれどももし単にご一閲に止めてくださるか、或ひは何かご随意の仮名ででもお載せねがへるなら、今日の手紙にわたくしもお答へしたことになり、且つなにかさっぱりとしまして、今后とも明るくおつきあひをねがへると切に思ふのです。

別便あり合せの中判広重数葉、遅れましたがこの春のお祝ひへのご挨拶まで、ご笑納ねがひ上げます。

   昭和七年九月二十日

 吉野信夫様 侍史

宮沢賢治