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[404a](1932年2月19日 杉山芳松あて)封書(封筒ナシ)【旧417】

昨秋はご懇なお手紙と数々の貴重な御地産品を態々お友達に托してお送りいたゞき今春またご叮寧なご年賀で重ね重ね何とも恐縮に存じます。あのお方ご来訪の節も肺炎后の気管支炎で何ともお目にかゝり兼ね早速のお礼状さへ儘ならず毎日毎日思ひ出しながらやっと今日やはり横臥のまゝで鉛筆書きのお礼を申しあげる次第です。然しもう茲十日以内には起きて歩ける見込もつきましたし今度も幸に肺結核にはならずに済みましたからこの夏はきっとまた去年のやうに仕事ができるだらうとそれのみ楽しみにして居ります。いたゞいたフレップ酒(それも一箱)はさすが下戸の私も嘗めるやうにしては度々呑みました。そしてそちらの吹雪の中で働かれるあなたに実に済まないと思ひました。燻製の鮭は勿論私もたべ家中でもたべ残りの大きな一本は切身にしてあちこちのハイカラさんたちへ贈りました。まことにあなたの辛苦の結晶をこの様にいたゞくこと心苦しいですからどうか決してこれからはかういふことはなさらず、気が向いたらやなぎらんの花をつまんで手紙に入れて下すったり、またお便りがなくともあなたがさういふ場所で大きな会杜の信用を得られしっかり働いてゐられることは花巻の農学校のまた私の自慢ですからどうかどこまでもまっすぐに、からだを大切にお進み下さるならほんたうにありがたい次第です。