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[395](1931年9月25日または26日)鈴木東藏あて 封書(封筒ナシ)

拝啓 一向に御便りも申上ずお待ち兼ねの事と存候 実は申すも恥しき次第乍ら当地着廿日夜烈しく発熱致し今日今日と思ひて三十九度を最高に三十七度四分を最低とし八度台の熱も三日にて屡々昏迷致し候へ共心配を掛け度くなき為家へも報ぜず貴方へも申し上げず居り只只体温器を相手にこの数日を送りし次第に有之今后の経過は一寸予期付き難く候へ共当地には友人も有之候間数日中稍々熱納まるを待ちてどこかのあばらやにてもはいり運を天に任せて結果を見るべく恢復さへ致さぱ必ず外交も致し或は易にありし様十一月頃は多分の注文を得るやも知れず小生のことはどうせ幾度死したる身体に候間これ以上のご心配はご無用に、且つ決して宅へはご報無之様願上候次に病中乍ら三田氏の石灰若し工場にて不足の際は花巻のもの俵も腐り初め来秦ともならぱ全部詰め替へを要するやとも思はれ候間価格は兎に角私方弟にお談しありて右におさし向け願はる間敷候や伺上候

  鈴木様

宮沢