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[379](1931年8月18日)澤里武治あて 封書

(表)水沢町大町 菊屋中央薬局内 沢里武治様
(裏)岩手県花巻町豊沢町 東北砕石工場花巻出張所(封印)〆

水沢からのお手紙拝誦しました。廿日に当地においでのことそれならば殊に好都合ですから切にお待ちいたして居ります。作曲の方はこれからもどしどしやられ亦低音部がゆるやかに作ってあればセロをも入れられるでせうし第一に歌詞ない譜曲だけスケッチして置かれれば歌詞は私が入れませう。仙人峠の方は今月或は蓋ろ学校が始まってからの方が好都合な点もあります。それはこの頃「童話文学」といふクォータリー版の雑誌から再三寄稿を乞ふて来たので既に二回出してあり、次は「風野又三郎」といふある谷川の岸の小学校を題材とした百枚ぐらゐのものを書いてゐますのでちやうど八月の末から九月上旬へかけての学校やこどもらの空気にもふれたいのです。とにかく二十日にはお待ちして居りますから駅前から電話をかけるか或は当日は朝顔会があるので午前中は町役場(館)の二階に居りますからそちらへ訪ねて下さるなら殊に好都合です。まづは。

 沢里武治様

宮沢賢治