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[338] 1931年5月6日 鈴木東蔵あて 封書(封筒ナシ)

  五月六日

拝啓

昨日宮城郡農会辞去后石巻より広淵沼開墾地を経て小午田に出で各処注文を請ひ乍ら夜十時半帰花仕候 広淵の方は本年は一寸六ヶ敷様子に有之双へ共斎藤報恩会の方は或は数日中に回答有之哉と切に期待致し居り候 何分にも宮城県は推奨は大に有効なりしも共同購入といふ点に却って需要を害したるらしく蓋ろ岩手県の如く各肥料店を直接売り込みしならば今頃は優に三十車を越え居たるかと甚残念に存じ居り候 之を経験として明年或は今夏以后は県よりは単に証明及推奨を乞ひ売込は工場より直接に致し度と存居候 就て今后の注文を請取るにも只今までの成績による処甚大に御座候間重ね重ね甚くどくは候へども宮城郡の方可成速かに御発送奉願度実に今回の成績は明年宮城より百車を得るや否やに関する処に御座候間何分のご配慮重ねて奉仰候 尚私儀二三日中再び工場へ参り御方針を仰ぐべく今明日中は今一度宮の目八幡矢沢更木二子に手を入れ度存居候

敬具

  鈴木藤三様

宮沢賢治