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[318] 1931年4月1日 鈴木東藏あて 封書(封筒ナシ)

拝復

一、水沢より帰りてお手紙拝誦仕候処最早取扱時間外にて電報為替差取不能に付本日長坂局を経て金壱百円御送金申上候間御査収被成下度候

二、扱て県南の注文に十貫入甚多く色々迷惑の次第には御座候へ共何分の大口にて今后の処も有之候間可成は先方の希望をそのまゝ引受致し度く然らざれぱ荷受集金何かに六ヶ敷相成候 就て右十貫入に要する費用を一俵に就き二銭と見積りたるたるは全く小生の失策専断に就き右に要する費用

臥代三銭高 包装料 厘高、扱 厘高
として厳密に御計算被成下右差額は小生持ちと致すべく何卒御一報被成下ぱ幸甚に御座候

三、次に昨日も御報致置候江刺胆沢売込分担の件菊田、中林両氏の完全なる御諒解を得候間今后は江刺郡は工場高橋氏間の直接関係と致され小生は単に必要に仍て説明又は宣伝申上べくその代りと申すもおかしく候へ共西磐井郡は略々花巻にて御諒解被成下候通り私扱に願上度此儀如何に御座候や何分の御詮義を仰ぎ奉り候

四、就て今后荷為替の御引受け並びに集金の責任は小生の注文書を差上たるものに限りたく此段充分御諒承を願上候。

五、次に前沢町福地氏の注文中一車は高橋氏御約束のものに有之候間右は同氏に於て御集金被成下も宜敷或は同氏宛金七円丈工場を経て小生方より御渡申上ては如何に御座候や。但しその他の注文に関しては小生関知仕らず候。

六、粒形尚大に過ぐるの批評は昨日水沢農学校にても有之候間何卒今一応の御奮発を願上度若し只今の品より十四%の二粍以上のものを除きたる分現在の価格にて出来致し候はゞ需要尚大となり六月以后製作の分も相当引受者有之べく、一方右箭粕二−三粍のものとても裸にて十貫十銭位ならぱ必ず小生にて何処へか向け申すべく候。

七、製品の包装を何とか今少し美的に致し度いつかお話の押印又は一俵毎に色刷荷札を附しては如何に候や

若し前文の条項全部御承知被成候はゞ右荷札並びに取付料は岩手県は私持ちと致しても宜敷候

八、いろいろ生意気千万の事ばかり申上候 何分大切の場合にて気も立ち居り候儘不悪御判読被成下度候。

    四月一日

敬具

  鈴木藤三様

宮沢賢治