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[286] 1930年12月7日 澤里武治あて 封書(封筒ナシ)

すっかり冬になりました。そちらも雪でせう。お変りはありませんか。この夏はおうちの方へ手紙あげたりしてゐました。お兄さんとは遊園地でダリヤや菊の会のあったとき二度もお目にかゝり写真をとって貰ったりしました。その節伺ひましたら、あなた、いつかのお話のところへご入籍なすったさうでまことにお芽出たう存じます。学校の方も引き続いてうまくやっておいででせうな。あなたの村へはわたくしの遠縁にあたる女の人が醤油屋だかへってゐます。この頃帰ったのでそちらの模様もきかうと思ってゐて遂会ひませんでしたが、じつにいろいろ伺ひたいことばかりです。わたくしすっかりよくなって今までの埋め合せに弟の店へ手伝ってゐます。十月は弟が招集だったのですっかりその代理をし通しました。来年の三月釜石か仙台かのどちらかへ出ます。わたくしはいっそ東京と思ふのですがどうもうちであぶながって仕方ないのです。レコードほしかったら送ります。左のうちです。遠慮なく云ってくれませんか。ベートンベン、第五、第六、第九、第一ピアノ司伴楽、ストラウス死と浄化。

  まづは。

    十二月七日