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[269](1930年春〜初夏)阿部芳太郎あて 封書

   花巻町末広町 阿部芳太郎様

杉のおはなしですが、度々植ゑ替へたのでは、どうしても枝の割合に根が張ってゐないと存じます。それが本年になって、一、湿気の不足 二、烈しい風 三、表土の浅いこと 四、蟻などの根を浮かすこと、などの一因子或ひは数因子によって、弱らされたのでないかと思ひます。

いま葉が黄褐を帯びてゐる様では土用を越すのが六ヶ敷いかもしれませんが、緑色淡く光沢不充分位の所ならぱ、必ず恢復いたしませう。

手当としては、一、下の枝を一乃至三本位切り取ること、二、適当の灌水(夕方やや灌水を多量に与へること)三、木をゆるが

して根が浮くやうならば支柱を与へること、(蟻はおとりになったとのことですから)四、根のまはりを根を切らないやうに環に掘って、腐った掃溜土を多量に埋めること、五、小便五倍位にして根の上からかける等の一つ或は数個を適宜ご選択の上お試みなすったらどうかと存じます。まづは。