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[257] 1930年3月4日 森佐一あて 封書

(表)盛岡市新穀町一四 森佐一様
(裏)三月四日 花巻町豊沢町 宮沢賢治(封印)〆

先日はお出でくだすってまことにありがたうございました。結構なお土産までいたゞいて何とも済みません。おうちの皆さまにもどうかよろしくお伝ひねがひます。またその節ごいっしょのお方はお妹さんではなかったし伺はうと思ひながらたうたう云ひそびれてしまひましたが、小原忠君があなたから伺って来たといふ事など考へ合せてあなたがこんどご結婚をなすった方だと思ひますがさうでなかったらどうぞ悪しからず、さうでしたら改めてのご挨拶も変ですが、まことにおめでたう存じます。そちら様へも今后よろしくとお伝へねがひあげます。

ご来訪以来わたくしも気分大へん明るくなり昨日も今日も半日づつ起きて今度こそはとわざと風に吹かれて見たりして居ります。

 まづはお礼ながら申しあげます。

   昭和五年三月四日

宮沢賢治

 森佐一様