目次へ  縦書き

[251](1929年12月) 鈴木東蔵あて 封書(封筒ナシ)

拝復 御照会の広告文案中石灰の間接肥効に関する件左の如くに御座候

「一、土壌に石灰を施用すれば腐植質の分解を旺盛ならしめ従て腐植質中の窒素は加給態となり石灰は恰も間接の窒素肥料の如く作用す。(諸教科書諸実験随所にあり)

二、仝、石灰は土壌中の不加給態なる燐酸鉄及燐酸礬土に作用して之を漸効ある燐酸二石灰乃至燐酸三石灰に変ず(大工原土壌学其他に明文あり)

仝、石灰は腐植質を分解して腐植質中の燐酸(フィチン態、レシチン態等)を植物に供給す 故に間接の燐酸肥料と称せられる(小生盛岡にて分析実験せり)

 元来燐酸は一反歩の土壌には三百貫平均を保有し、年二貫を消費するもよく百数十年肥効を示し得べき筈なるもその然らざるは之等が多く不加給態なるによる

三、仝、石灰は土壌中の多くの場合不加給なる珪酸加里を炭酸加里に変じ植物に給与す

仝 腐植質中の加里燐酸に準ず

故に間接の加里肥料と称せられる。

四、次に前文の広告文中炭酸石灰三十貫を使用しての所に過燐酸五六貫と加へ置く方或は穏当ならん」

序ながら小生の名前は宮沢賢治に有之候 以上後返事迄

敬具