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[250](1929年12月) 鈴木東蔵あて 封書(封筒ナシ)

拝復 貴書簡拝誦御照会の件左に申上候

一、金肥連用して次第に効を減ずる場合は

 a、当初土壌にその成分欠乏せるも連用によりて次第に貯留するに起因するもの
    特に燐酸肥料及石灰加里肥料

 b、肥料の悪副作用によりて年々の肥効を結果に於て減ずるもの
    特に智利硝石、酸性肥料、に候

二、広告分文に於る酸性の説明

  土壌の酸性とは土壌中の石灰や加里が不釣合に少ないことを云ふ

次に御広告文中気付きたる点を申上れば

 第五項鉱毒の件は適切には無之蓋ろ一、草地に施用して良質多量の草を得作業時間の短縮と耕地土性の改良とを期せられよ、二、赤渋地に燐酸を用ふる際は必ず加用して燐酸の固定を防がれたし、三、砂地に於ても燐酸の流亡を防ぐために同上、四、いづれの肥料と混合するも差支なきを以て特に少量の肥料を一様に散布する際など甚便利なり 等々御添加可然と存候。

次に消石灰との得失は一に粉末の微と価格の廉によりて定まり候間その点充分御研究被遊度候。左図御参考迄

消石灰 土中にて 一反溶解后 炭酸石灰となる

最微粒 最速効

石灰岩末 一部は不溶 一部は仝前

粒小なる程 速効

粒子の状態(顕鏡御研究有効と存候)

(ぎざぎざの粒子の図)

速効
表面積大なる程速効 再び砕きて砕け易し

(丸い粒子の図)

遅効
溶け難し

病中乱筆御免被成下候

鈴木東蔵様

宮沢賢治