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[239] 1928年7月3日 菊池信一あて 封書

(表)石鳥谷駅前 菊池信一様 平安
(裏)七月三日 宮沢賢治(封印)〆

お変りありませんか。先日は結構なものをまことにありがたう。肥料の本を自働車にたのんで置いてそれがしぱらく盛岡行をやめて届かなかったのでまだ手許にあります。ちやうど追肥をしらべる時季ですが今年はこの通りの天候でとてもさきの見先もつきませんし心配なことは少しもありませんが追肥だけはみんなやらないことにしやうと思ひます。どの肥料もまだ殆んど利いてゐないのです。それで約束の村をまはる方は却って七月下旬乃至八月中旬すっかり稲の形が定まってからのことにして来年の見当をつけるだけのことにしやうと思ひます。お手数でも訊かれたらどうかさうご返事ねがひます。約三週間ほど先進地の技術者たちといっしょに慟いて来ました。もしお仕事のすきまにおいでになれるならお待ちして居ります。葉書をさきにお出しください。肥料の本もそのときはお返しいたせます。一番除草でお忙しいでせうが折角お身体大切に。   まづは。

   七月三月