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[235](1928年6月7日) 宮澤政次郎あて 封絨葉書

(表)岩手県花巻川口町 宮沢政次郎様
(裏)七日夜八時 仙台駅ニテ 賢治拝(封印)〆

十一時仙台に着きましてすぐ博覧会へまゐりました。水産加工品は特に注意して数回みましたがたゞいまのところはいかにも原始的なものばかりで仕事の余地はあり余るとは思はれますが、確かに今后の数年の間には、一方で著しく進んでゐる菓子その他精製工業の技術から影響を受けて細かなものは沢山出るやうになると存じます。但し農産製造品との連絡はまだ当分は着くまいと思はれます。いづれ詳しく東京で調べてまた申しあげるか新法を作るかいたします。

大学も見せてもらひました。阿部末吉氏には掛けちがって会へませんでしたが、また文学の方の教授たちと古本屋で浮世絵をいぢってゐるうちに知り合ひになったりもいたしました。汽車に少し間があって少々停車場で待ちくたびれて居ります。

明朝五時には水戸に着き公園等を見て八時から農事試験場に参り多分明夕方東京に入ります。みなさま何卒お疲れにならぬやう、祈りあげます。わたくしの方の今度の旅は大へん落ち着いて居りましてご心配ありません