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[229](1927年4月)冨手一あて 封書

既植部処理

一、プラタヌス七葉樹さくらポプラかしはノ多クハ放置スルモ充分繁茂スベシ。

二、かへで類は最鉱質養料を要するに対し之を心土に植栽したるもの多きを以て活着甚困難なるが如きもまづ之が蘖を去りて一本立とし第三項手入を行はゞ恢復するものもあるべし。

三、一般的手入としては
 樹木側根の先端より一.五尺幅一.五尺深の環を堀穿し之に一.二尺深まで石灰砂を以て搗きたる米糠二〇〇乃至五〇〇匁を混和したる表土を填充し(踏み付くべからず)残部0.三尺深は心土にて埋め潤葉樹及唐檜類圏内全部坪二〇〇匁の割合にて石灰岩抹を施す

四、いてふ及さくらの枝は一方のみ切り縮むべからず。

五、必要に応じて夕刻又は早朝一樹に付き五升乃至二斗を灌水す。

土地改良法

多くは壌質粘土にして腐植質を欠き著しく酸性なり。時に礫質なる箇所あり、均平の際露出したる心土なるを以て養料に乏しく屡々排水不良なり。濶葉樹及唐檜類、蓼科十字科を除く多くの花卉類等を植栽せんには先づ一歩当三〇〇匁の細粒石灰岩抹を加へ酸性を矯正せざるべからず。(三年后には更に同量を与ふ)次で之を一.三尺の深さに耕起し坪当り厩肥二貫を加へ混和し置くときは何種の植物たるを問はず速に活着繁茂すべし。厩肥は排水佳良なる箇所にては豚肥を嫌はず。亦草地は○.五尺耕にて充分ならん。混和後冬寒に曝露する事切要なり。酸性矯正の際雑草の種類変るべきを以て此期除草に注意すれば以后の繁植を未然に防ぎ得べし。

    石灰岩抹 花巻練瓦会杜、外二日立ヨリ来ルモノアリ

立地と適樹其他

一、かしは、はんのき、アメリカやまならし、しらかんば、は特に土地改良をなさざるも随所成育すべく最適ならん。

かしはは殊に高燥地に群落せしむるに佳なり。月下の散策は碧玉楼中に在るの想あり、冬の景観亦捨つべからず。赤楊は水路に沿ひて密生すれぱ最美観を呈す。アリリカやまならしの巨葉のもの、家屋東南方に栽うれば晨光時漣波の如くに燦く。
しらかんばは暗緑林前疎立すべく亦高地に群落を作るべし。

二、ドイツ唐檜かへで類いてふは表土残留の部分に充分施肥したる后に非れば成育困難ならん。

ドイツ唐檜は冬風を避けて栽うべく、空処に散点せしむるか或は淡緑林前正しき排列を欲す。

三、礫質の部分にはねむ最適なり。

八月熱帯的なる桃色の花咲く。

四、崖にはこぶし(ひきざくら)可ならん。

本郷土の代表的樹木なりと思考す。桜に併び咲く。芬香高雅比類なし。

五、ぎんどろと落葉松の混植最美観を呈す。

六、バーゴラには一二藤の代りに葛を用ふるも可ならん。アメリカにては日本より輸入し一株二弗に至る。八月中旬紫花を垂る。芬芳葡萄に類す。

七、梅林附近の低湿地には小亜細亜風のアイリスの群落をつくり、萱場は可成赤松を去りて赤楊を散点したし。