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[225] 1927年1月30日 伊藤清一あて 封書

(表)花巻川口町十二丁目 伊藤清逸様
(裏)桜 宮沢賢治拝(封印)〆

  伊藤清逸様

宮沢賢治

先刻は失礼いたしました。

その節お話のありまし南城での農事講話の件あとで考へて見ますと私は三年ほど前やはりあの場所で土壌肥料のことを一日間申して居りますし第一あまり地元で殊にさうでなくても只今の仕事が学校や役所へ挑戦的でありますので今度また出ましては何とも不遜の譏を免れません。且つ正直を申せば私ももうそろそろ一科の学にまとまりを付けなければなりませんので誰かそんな農芸化学的なことを専攻にこの土地でやって呉れる人がないかせっかく考へてゐるのであります。

就ては今度は何卒

   農事試験場本場  工藤藤一氏
   当地農学校    工藤又治氏
   水沢農学校(当町出身)那須川郁氏

の御三名中からご都合宜しいお方をご依頼下さるやうおねがひいたしたう存じます。お互いはどうせ百姓ですから百姓らしく春になったらまたいろいろ往復して研究もいたしませう。

   一月三十日夕。