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[210] 1925年8月14日 森佐一あて 封書

(表)盛岡市新穀町十四 森佐一様
(裏)花巻川口町 宮沢賢治(封印)〆

失礼しました気前よくゆるしてください

スケッチニ篇同封しました

第二篇中 赤縞のズボンをはいた といふところは本統は 萎びて黄いろな老楽長 といふのです。読む人によては萎びてといふことぱですっかり気分をこわすかもしれませんがもしあなたが大丈夫とお考へでしたら勿論もとの手帖のまゝにねがひます。

会費もあげなければなりませんが、あの本で負けてくれませんか。来月から入れますよ。

あなたの作品の清浄さうつくしさ、いろいろな模様のはいった水精のたまを眼にあててのぞいてゐるやうな気がします。早く一冊にしてください。わたくしの微力からたとへそれが小さいものであらうとも。小さくても一頁づつがふしぎな果樹園のやうになった本ができます。あなたのならどれだって中央のものより一段上です。どうか自重してください。詩の政治家になんぞならないことをぼくは至心に祈ります。

  八月十四日