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[165](1920年6月〜7月)保阪嘉内あて 封書(封筒ナシ)

お手紙ありがたうございました

お互にしっかりやらなければなりません。突然ですが。私なんかこのごろは毎目ブリブリ憤ってばかりゐます。何もしやくにさわる筈がさっぱりないのですかどうした訳やら人のぼんやりした顔を見ると、「えゝぐづぐづするない。」いかりがかっと燃えて身体は酒精に入った様な気がします。机へ座って誰かの物を一言ふのを思ひだしながら急に身体全体で机をなぐりつけさうになります。いかりは赤く見えます。あまり強いときはいかりの光が滋くなって却て水の様に感ぜられます。遂には真青に見えます。確かにいかりは気持が悪くありません。関さんがあゝおこるのも尤です。私は殆んど狂人にもなりさうなこの発作を機械的にその本当の名称で呼び出し手を合せます。人間の世界の修羅の成仏。そして悦びにみちて頁を繰ります。本当にしっかりやませうよ。

あなたの様に心的にも身的にも烈しい動きをしなければならない状態ではいつもこんなことはお感じでせう。

 まだ、まだ、まだ、まだこんなことではだめだ。
 専門はくすぐったい。学者はおかしい。
 実業家とは何のことだ。まだまだまだ。

しっかりやりませう。ーしっかりやりませう。ー
しっかりやりませう。ーしっかりやりませう。ー
しっかりやりませう。ーしっかりやりませう。ー
しっかりやりませう。ーしっかりやりませう。ー
しっかりやりませう。ーしっかりやりませう。ー
しっかりやりませう。ーしっかりやりませう。
しっかりやりませう。ーしっかりやりませう。
しっかりやりませうーしっかりやりませう
しっかりやりませうーしっかりやりませう しっかりやりませう
しっかりやりませうーしっかりやりませう

かなしみはちからに、りはいつくしみに、いかりは智慧に みちびかるべし。