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[132](1919年1月28日)宮澤政次郎あて 封書

(表)巌手県花巻川口町 宮澤政次郎様 平安
(裏)大正八年一月廿七日 東京市小石川区雑司ケ谷町一三〇 宮沢賢治(封印)封

拝啓 弐十五日発御葉書拝見仕り候

とし昨日午後は三十六度七分 夜は三十六度五分 今朝は更に下り三十六度三分と相成り始めて平熱に達したる次第に有之今後は最早全快を待つのみと相成り候。この塩梅もう四日も続けば或は入浴も致し得べくと存じ候。

当地は感冒流行の噂は聞き候へども成程と思ふ様の事には未だ会はず候。但し往来には仁丹を少しづゝ噛み、帰宿後は咽喉を灌ぎぬるゝ様の日は外出を見合せ随分と注意致し居り候間何卒御安心被下度候。

昨日の御願を突然にて或は御心配かと存じ候。最初は仕事のすき不好を申すひまも無之候間、先づ間に合ふ仕事にて生計を立てながら次第に望む所へも向ひ度考にて模造真珠等の製造、えり止、指輪用の飾石の研磨敗売等又は宅の方と連絡をとりて出来る仕事あれば殊に結構に御座候。いづれにせよ、実際に働くときは今こそといふことはこの後とても無之次第に候間何卒御許し願度と存じ候。

大正八年一月廿七日

宮沢賢治

父上様
母上様