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[126] 1919年1月23日 宮澤政次郎あて 封書

(表)巌手県花巻川口町 宮澤政次郎様 平安
(裏)大正八年一月廿三日 東京市小石川区雑司ヶ谷町一三〇 宮沢賢治(封印)〆

拝啓、とし昨夜は三十七度六分、今朝は三十六度八分本日午後は三十七度八分に御座候。

以前は一日中体温最高は夜十二時前後に有之候処、近来は午後三四時にて夜は却て下降し候。本日も之が最高と存じ候。

恢復は割合に遅き様に御座候へども二木博士も申され候通り心臓其他は速に恢復し只咽喉等に関する熱のみ割合に下降遅緩なるに御座候間、又本人も以前は膝を曲げて暫らくも立つ事能はざりし処、近頃は何ともなき由申し居り候間先づ之にても随分宜しく相成りし次第に御座候。

附添の看護婦は例によりて熱下れぱ誠に機嫌宜しく、上りたるときは兵隊の様にテキパキと仕事は立派に致し候。但し私より可成病人に気遣させぬ様色々注意致し居り候間御安心奉願候。

近頃又感冒流行にて病院にも入院者大分増し申し候。

私は健全に御座候間御安心被成下度候。

尚とし子下着は洗濯してある為にまだ要らぬ由、餅、油揚等は難有頂戴致し居り候。

   大正八年一月二十三日