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[117] 1919年1月18日 宮澤政次郎あて 封緘葉書

(表)巌手県花巻川口町 宮澤政次郎様
(裏)一月十八日 東京市小石川区雑司ヶ谷町一三〇 雲台館 宮沢賢治(封印)〆

昨夜は解熱剤を用ひず候へども三十七度六分(昨日午後)及三十七度二分にて今朝は三十七度二分に御座候。

食慾も大分起り今朝よりは粥を食すべく但し菜の方は尚一二日控ふる由に御座候。

刺身を折角望み居り候問明後日頃迄に尚熱も下り、他の菜を食して差支なき様ならば魚屋にてまぐろの切身の新鮮なるものを求め病院にて刺身に作りて貰ひて食する様に至すべく候。

今度の病室には他の患者も五人有之候へどもみな女にて軽症者のみに御座候 決して伝染等の心配は無之候。又気持もあたりにまぎれて却つて宜しき様子に御座候間御心配なき様に奉願候。

私は毎日朝七時半乃至八時に病院に参り模様を聞き書信上げ候後上野の図書館にて三時頃迄書籍の検索読書等を致し夕方又病院に参り候。

夜は早くやすみ決して勉強過ぐる様の事又は無用の外出候様の事は仕らず候間御安心奉願候。

先は右迄。