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[1O0] 1918年12月30日 宮澤政次郎あて 封書(托便)

(表)花巻川口町豊沢町 宮澤政次郎様 托喜八様御帰花
(裏)大正七年十二月三十日 古宇田病院ニテ 賢治拝(封印)〆

拝啓 昨日申し上げ候処未だ御電報接手仕らず今夜帰宅するや否や不明に御座候間喜八氏に御依頼本日の容態申し上げ候。

 昨日は  朝 熱三十八度二分
      夜  三十九度二分
      今朝  三十八度二分

脈拍は九〇−一一〇を往来仕り、呼吸は十八 二十位に御座候。明日は勘定日に有之それにて今後何程掛るやも明に相成り申すべく候。本人には病状経費共極めて軽き様申し置くべく候間御安心奉願候 尚当地滞在中私も兼て望み候通りの職業充分に見込相附き候。蛋白石、瑪瑙等は小川町水晶堂、金石舎共に買ひ申すべき由岩谷堂蛋白石を印材用として後に見本送附すべき由約束致し置候

私共下宿は極めて居心地宜しく大低私にも精進物を出し呉れ候。

湯には毎日入り申し候。

病院の看護婦は極めて丈夫なる熟練したる女にて、先づ適当と存ぜられ候。

医師もみな親切に有之決して御上風無之候間誠に気安く御座候。

  先は色々取集め右迄申し上げ候。

敬具 

   十二月卅日

賢治

 父上様